車屋を始めるには?中古車屋の開業手順を古物商許可から集客まで順番に解説

整備工場や販売店の勤務から独立する場合も、副業で小さく始める場合も、車屋(中古車屋)を始めるには、営業所を決めて古物商許可を取り、仕入れ先と販売の仕組みを整える、という順番で進めます。中古車屋の開業ガイドとして、この記事では「車屋を始めるには」何をどの順で行うかを、古物商許可から集客まで、開業までの手順を順番に整理しました。開業までの期間は、公式に示されているものとして古物商許可の標準処理期間40日(福岡県警察の案内)を基準にし、それ以外の手順は日数を断定せずに書いています。
この記事で確認した一次情報
- 古物商許可申請(警視庁)申請場所、手数料19,000円、必要書類
- 古物商等の許可申請について(福岡県警察)標準処理期間40日間
- No.2090 新たに事業を始めたときの届出など(国税庁)開業届、青色申告の期限
車屋を始めるには何が必要か(開業手順の全体像)
車屋を始めるのに国家資格は要りませんが、中古車を仕入れて売る営業には古物営業法第3条にもとづく古物商許可が必要です。許可を受けずに古物営業を営むと、同法第31条により3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象になります。許可の申請書には営業所の名称と所在地、営業所ごとの管理者の氏名を書くため(第5条)、営業所と管理者は申請前に決めておく必要があります。許可が下りたら、営業所への標識の掲示(第12条)、取引のたびの本人確認(第15条)、古物台帳への記載(第16条)が始まります。そこから仕入れ、保険やローン、保証の準備、販売管理と表示のルール、集客の順に進めます。整備も行うなら地方運輸局長の認証(道路運送車両法第78条)、廃車を預かるなら引取業の登録(自動車リサイクル法第42条)も手順に加わります。
| 順番 | やること | 根拠や窓口 |
|---|---|---|
| 1 | 事業の形(個人か法人か)と営業所を決め、管理者を選ぶ | 古物営業法第5条、第13条 |
| 2 | 古物商許可を申請する | 主たる営業所を管轄する警察署 |
| 3 | 開業届や青色申告の届出を出す | 税務署(国税庁No.2090) |
| 4 | 仕入れ先(オークション、業販、買取)を確保する | 各オークション会場の入会審査 |
| 5 | 保険、ローン、保証の取扱いを決める | 各保険会社、信販会社、保証会社との契約 |
| 6 | 販売管理と表示(古物台帳、支払総額表示)を整える | 古物営業法第16条、自動車公正競争規約 |
| 7 | 集客(店頭、自社サイト、掲載サイト)を始める | URLを使う場合は許可申請書または変更届で届出 |
手順1:車屋の営業所と事業形態を決める
車屋の開業で最初に決めるのは、営業所の場所と、個人事業か法人かという事業形態です。古物商許可は主たる営業所の所在地を管轄する公安委員会に申請し(古物営業法第5条)、申請書には主たる営業所とその他の営業所の名称と所在地を書きます。さらに第13条で、営業所ごとに業務を適正に行うための責任者として管理者を1人選ばなければなりません。警視庁の案内では、個人の申請でも法人の申請でも、本人(法人なら役員全員)と営業所の管理者それぞれの略歴書、本籍が記載された住民票の写し、誓約書、身分証明書が必要です。法人の場合は定款と登記事項証明書も添えます。身分証明書は運転免許証ではなく、本籍地の市区町村が交付する書類です。営業所の物件を契約する前に、賃貸借契約で事業利用が認められているか、車の保管場所をどう確保するかを確認しておくと、申請段階でのやり直しを防げます。
営業所として認められる条件は「古物商許可の営業所・保管場所の要件」、副業として始める場合の注意点は「個人事業主・副業で中古車販売を始める方法」で解説しています。
手順2:古物商許可を申請する(手数料と標準処理期間)
古物商許可の申請先は、主たる営業所の所在地を管轄する警察署の防犯係(警視庁の場合)で、手数料は19,000円です。様式は古物営業法施行規則の別記様式第1号の許可申請書で、取り扱う古物の区分には「自動車」を選びます。福岡県警察は、申請を受け付けてから許可か不許可の処分をするまでの標準的な期間を40日間と案内しており、目安なので前後することがあるとしています。つまり、書類がそろった日から数えて40日程度は営業を始められないと見込んで、物件の契約日や仕入れ開始日を組みます。自社サイトや中古車掲載サイトで在庫を見せて取引の申込みを受ける場合は、そのURLを申請書に書き、URLの使用権限を示す資料を添えます(第5条第1項第6号、警視庁の添付書類一覧)。許可が下りたら、営業所に標識(縦8cm、横16cm、紺色地に白文字、施行規則第11条と別記様式第13号)を掲げます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請先 | 主たる営業所の所在地を管轄する警察署で受け付けます。 |
| 手数料 | 19,000円です(警視庁の案内)。 |
| 標準処理期間 | 40日間が目安で、前後することがあります(福岡県警察の案内)。 |
| 主な添付書類 | 略歴書、住民票の写し、誓約書、身分証明書、URLの使用権限を示す資料(該当者のみ)を添えます。 |
| 許可後の掲示 | 営業所に古物商の標識を掲げます。 |
書類の一覧は「古物商許可の必要書類一覧【自動車商】」、申請書の書き方は「古物商許可申請書の書き方」にまとめています。
手順3:開業届と税金の手続き(インボイスと古物商特例)
車屋を個人で開業する場合、税務署への届出が必要です。国税庁のタックスアンサーNo.2090によると、個人事業の開廃業等届出書の提出期限は、事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限までです。青色申告の承認申請書は、その年の1月16日以後に開業した場合は開業の日から2か月以内に出します。従業員に給与を払うなら、給与支払事務所等の開設届出書を開設から1か月以内に出します。消費税では、インボイス(適格請求書発行事業者)の登録をするかどうかを決めます。中古車屋に関係が深いのは古物商等特例です。国税庁のQ&A問106は、古物商が適格請求書発行事業者以外の消費者などから中古車を買い受けた場合、一定の事項を書いた帳簿の保存だけで仕入税額控除が認められるとしています。古物台帳をこの帳簿として使う場合は7年間の保存が必要です(問110)。
- 個人事業の開廃業等届出書:開業した年分の確定申告期限まで
- 所得税の青色申告承認申請書:1月16日以後の開業なら開業から2か月以内
- 給与支払事務所等の開設届出書:開設から1か月以内
- 適格請求書発行事業者の登録:登録するかどうかを取引先の構成を見て判断する
手順4:車屋の仕入れ先を確保する
車屋の仕入れ先は、オートオークション、業者間の業販、一般の方からの買取りの3つが中心です。オートオークションの入会条件は会場ごとに定められており、古物商許可の取得を前提に手続きを進めるのが通常の順番です。一般の方から買い取る場合は、古物営業法第15条により、相手方の住所、氏名、職業、年齢を確認するなどの措置をとらなければなりません。買い取った車は古物台帳に、車検証に記載または記録された登録番号、車名、車台番号、所有者名を書きます。所有者がローン会社になっている車を買い取るときは、売主に売却する権限があるかを確かめます。仕入れた車に盗品の疑いがあると認めたときは、第15条第3項によりただちに警察官に申告します。オークションの入会審査や業販の取引開始にかかる日数は会場や取引先ごとに異なり、公的な目安は示されていません。
ルートごとの使い分けは「中古車の仕入れルート4種類」、会員の条件は「古物商許可とオートオークション会員」で確認できます。
手順5:保険、ローン、保証と引取業・整備の認証
販売を始める前に、お客様に提供する保険、ローン、保証の取扱いを決めます。自動車保険の代理店になる、信販会社と加盟店契約を結ぶ、保証会社の商品を扱うといった選択は、それぞれの会社の審査や契約条件によるもので、法律で一律に決まった手続きや期間はありません。表示との関係では、自動車公正取引協議会が、保証を付けて売る場合はその費用を車両価格に含め、保証の有無と内容を支払総額の近くに表示するよう定めています。あわせて、自社でやる業務の範囲によって追加の許認可が必要になります。お客様から廃車を頼まれた車を引き取るなら自動車リサイクル法第42条の引取業の登録、分解整備などの特定整備を自社で行うなら道路運送車両法第78条の地方運輸局長の認証です。どちらも、外部の登録業者や認証工場に任せるなら自社での取得は要りません。
| 自社でやる業務 | 必要な許認可 | 窓口 |
|---|---|---|
| 中古車の仕入れと販売 | 古物商許可(古物営業法第3条) | 警察署 |
| 廃車を頼まれた車の引取り | 引取業の登録(自動車リサイクル法第42条) | 都道府県、保健所設置市など |
| 特定整備(分解整備など) | 自動車特定整備事業の認証(道路運送車両法第78条) | 地方運輸局 |
保険代理店の登録やローン加盟店の審査期間は、各社の公開情報で統一的には示されていません。開業スケジュールには余裕を持たせてください。
手順6:販売管理と価格表示のルール
車屋の販売管理で守るべきルールは、古物営業法の記録義務と、中古車の価格表示のルールの2つです。古物台帳は、仕入れのときだけでなく自動車を売ったときにも記載が必要で(古物営業法施行規則第18条)、最終の記載から3年間保存します(法第18条)。エクセルなどの電磁的方法でもかまいませんが、営業所ですぐ印刷できる状態にしておきます。価格表示は、2023年10月1日施行の自動車公正競争規約の改正により、車両価格に諸費用を加えた「支払総額」を表示し、内訳として車両価格と諸費用の額を示します。納車準備費用やオークション陸送費、販売手数料を諸費用として別に請求できません。在庫が増えるほど、仕入れ値、整備費、諸費用、売値、台帳の記録を別々のファイルで持つと食い違いが出やすくなるため、1台ごとにまとめて持てる車両販売システムを使うと管理が楽になります。
- 古物台帳:仕入れと販売のたびに記録し、3年間保存する
- 支払総額表示:プライスボード、Web掲載、注文書の価格をそろえる
- 原価管理:仕入れ値、整備費、陸送費を1台ごとに積み上げて粗利を出す
1台あたりの粗利の考え方は「中古車販売の利益率はどのくらい?」で解説しています。
手順7:車屋の集客(店頭、自社サイト、掲載サイト)
車屋の集客は、店頭の展示、自社のホームページ、中古車掲載サイトの3つを組み合わせるのが一般的です。古物営業法では、インターネットで在庫を見せて取引の申込みを受ける場合、その送信元のURLを許可申請書に書くことになっており(第5条第1項第6号)、許可後にURLを追加したり変えたりした場合は変更の届出が要ります。また第12条第2項により、規模が著しく小さい場合などを除き、氏名または名称、許可をした公安委員会の名称、許可証の番号をインターネットで公表します。広告に載せる価格も支払総額で表示します。公取協のFAQは、Web掲載価格と店頭のプライスボードの価格が食い違わないよう注意を促しています。開業直後は在庫台数が少なく、掲載サイトの費用対効果が見えにくいため、車検や点検の案内など、販売後の接点を持てる仕組みを先に用意しておくと、2台目以降の販売につながります。
URLの届出の具体的な手順は「古物商許可のURL届出」、届出の期限は「古物商許可の変更届・書換申請」にまとめています。
車屋の開業手順のまとめ
車屋(中古車屋)を始めるには、営業所と管理者を決め、主たる営業所を管轄する警察署に古物商許可を申請するところから始めます。警視庁の案内で手数料は19,000円、福岡県警察の案内で標準処理期間は40日間です。許可を受けずに中古車を売ると、古物営業法第31条により3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象になります。並行して税務署に開業届を出し、インボイス登録の要否と古物商等特例の使い方を決めます。許可後は標識の掲示、本人確認、古物台帳の記録を行い、オークションや買取りで仕入れを始めます。廃車を預かるなら引取業の登録、特定整備をするなら地方運輸局長の認証も必要です。販売では支払総額表示を守り、店頭とWebの価格をそろえて集客します。
開業にかかる費用は「中古車屋の開業資金はいくら必要?」、独立後の収入の考え方は「中古車販売の自営で年収はどう決まる?」を参考にしてください。
車屋の開業に関するよくある質問
- 車屋を始めるのに資格は要りますか?
- 国家資格は要りませんが、中古車を仕入れて売るには古物営業法第3条の古物商許可が必要です。申請先は主たる営業所の所在地を管轄する警察署で、警視庁の案内では手数料は19,000円です。整備(特定整備)を自社で行う場合は、別に地方運輸局長の認証が要ります。
- 車屋の開業にはどのくらいの期間がかかりますか?
- 公式に示されている期間は、古物商許可の標準処理期間(福岡県警察の案内で40日間)です。営業所の契約、仕入れ先の確保、オートオークションの入会審査などにかかる日数は、公的な資料に統一の目安がありません。許可の40日間に、書類の準備と営業所探しの期間を足して計画してください。
- 自宅で車屋を開業できますか?
- 古物商許可は営業所ごとに受けるため、自宅を営業所にする場合も、営業所として使えるかを管轄の警察署に確認します。賃貸物件や駐車場の使い方の注意点は、営業所の要件の記事で解説しています。
- 車屋の開業届はいつまでに出しますか?
- 国税庁のタックスアンサーNo.2090によると、個人事業の開廃業等届出書の提出期限は、事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限までです。青色申告の承認申請は、1月16日以後に開業した場合は開業の日から2か月以内です。
- 車屋を独立開業したらインボイス登録は必要ですか?
- 登録するかどうかは事業者の判断です。国税庁のQ&A(問106)では、古物商が適格請求書発行事業者以外の消費者などから中古車を買い受けた場合、一定の事項を書いた帳簿の保存だけで仕入税額控除が認められるとされています(古物商等特例)。
- 中古車販売を始めるとき、車両や顧客の管理はどうすればよいですか?
- 販売する車の仕入れ値・整備費・売値、顧客の情報、注文書や保証書を1か所で扱えるのが車両販売システム(車販ソフト)です。整備も行う場合は自動車整備システム(自動車整備ソフト)とデータがつながるかを確認します。整備システム 比較や整備ソフト おすすめの情報を見るときは、整備ソフト 安いかどうかだけでなく、整備システム リースなしで始められるか、開業時の台数に合うかも確かめてください。
出典
この記事は次の一次情報をもとに作成しています(2026年10月4日確認)。
- 古物営業法(e-Gov法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000108
- 古物営業法施行規則(e-Gov法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/407M50400000010
- 警視庁「古物商許可申請」:https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/tetsuzuki/kobutsu/tetsuzuki/kyoka.html
- 福岡県警察「古物商等の許可申請について」:https://www.police.pref.fukuoka.jp/seian/seikan/kobutukyokasinsei.html
- 国税庁 タックスアンサーNo.2090 新たに事業を始めたときの届出など:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2090.htm
- 国税庁 インボイスQ&A 問106(古物商等の古物の買取り等):https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/106.pdf
- 使用済自動車の再資源化等に関する法律(e-Gov法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000087
- 道路運送車両法(e-Gov法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0000000185
- 自動車公正取引協議会「中古車の販売価格の表示が、『支払総額』に変わりました」:https://www.aftc.or.jp/contents/am/shiharai/index.html
