中古車販売の消費税とインボイス|古物商特例で個人から仕入れた車も控除できる条件

中古車販売の消費税とインボイス 古物商特例と2割特例、簡易課税を国税庁の資料で整理

中古車販売の消費税は、個人のお客様や免税事業者から仕入れた車でも、古物商許可を持っていれば「古物商特例」によって仕入税額控除が受けられます。条件は、決められた事項を帳簿に書いて保存することです。この記事は中古車屋の開業ガイドの一つとして、「中古車販売の消費税とインボイス」をテーマに、古物商特例と2割特例、簡易課税を国税庁の資料で整理します。あわせて、令和8年10月から70%に下がった免税事業者からの仕入れの経過措置も、車屋の経費のどこにかかるかを具体的に説明します。

この記事で確認した一次情報

中古車販売の消費税とインボイス制度の基本

インボイス制度(適格請求書等保存方式)は令和5年10月1日に始まりました。国税庁のタックスアンサーNo.6498によると、この制度の下では、一定の事項が書かれた帳簿と適格請求書(インボイス)などの両方を保存することが、仕入税額控除の要件です。適格請求書を出せるのは、税務署長の登録を受けた適格請求書発行事業者だけです。そのため、消費者や免税事業者からの仕入れは原則として控除できなくなりました。ただし中古車販売のように古物を買い取る業種には、帳簿の保存だけで控除を認める古物商特例があります。中古車屋の仕入れ先は、オークション会場、業者間の業販、下取り、一般のお客様からの買取りに分かれ、そのうち下取りと買取りの多くは個人が相手です。

インボイス制度の影響は、仕入れ側と売上げ側で分けて考えると整理しやすくなります。仕入れ側では、相手がインボイスを出せるかどうかで、必要な書類が変わります。売上げ側では、自分がインボイス登録をするかどうかで、業者のお客様が仕入税額控除を受けられるかが決まります。店頭で一般の方に売る比率が高い店と、整備工場や他の販売店への業販が多い店とでは、登録の判断が変わります。

取引の場面インボイス制度で確認すること根拠
一般のお客様から下取り、買取り相手は登録事業者ではないので、古物商特例で帳簿を整えるQ&A問106
インボイス登録済みの業者から仕入れ適格請求書を受け取って保存するQ&A問106
免税事業者の外注先に板金や陸送を頼む古物ではないので経過措置(現在70%)の対象Q&A問113
整備工場や他店へ業販で売る相手が控除を受けるには自店のインボイスが必要No.6498
一般のお客様へ小売で売る消費者は控除を受けないので、インボイスの交付は求められない場面が多いNo.6498

適格請求書発行事業者には、取引の相手方(課税事業者に限る)から求められた場合にインボイスを交付する義務と、写しを保存する義務があります(No.6498)。

古物商特例で中古車の仕入税額控除を受ける要件

古物商特例とは、古物営業法の許可を受けた古物商が、適格請求書発行事業者以外の者から販売用の古物を買い受けたときに、一定の事項を書いた帳簿の保存だけで仕入税額控除を認める特例です。根拠は消費税法第30条第7項と消費税法施行令第49条第1項第1号ハです。国税庁のインボイスQ&A問106は「当社は、中古車販売業(古物商)を営んでおり、事業者及び消費者から中古車の仕入れを行っています」という質問への答えとして、この特例を説明しています。つまり、個人のお客様から下取りや買取りで仕入れた中古車は、許可を持つ店であれば帳簿だけで控除できます。一方、相手が適格請求書発行事業者なら特例は使えず、インボイスの受け取りと保存が必要です。

要件を分解すると次の4つです。どれか一つでも欠けると特例は使えません。

要件中古車屋での確認方法
古物営業法上の許可を受けた古物商であること公安委員会の許可証があり、品目に自動車を含めて営業している
相手が適格請求書発行事業者以外であること個人のお客様、免税事業者、登録していない課税事業者からの仕入れ
仕入れたものが古物であること一度使用された自動車や、使用のために取引された自動車
事業として販売する棚卸資産であること販売用の在庫として仕入れた車(社用車として使う車は対象外)

Q&A問106は注意点も二つ挙げています。一つは、令和6年4月1日以後、輸出物品販売場(いわゆる免税店)で消費税が免除された物品と知りながら仕入れた場合は、古物商特例の有無にかかわらず控除できないことです。もう一つは、令和8年度の改正で、特定金属くずが古物商特例の対象から外れ、別の特例に移ったことです。中古車の販売そのものには直接かかわりませんが、解体や部品取りで金属くずを扱う店は、令和8年9月1日以後の買受けから扱いが変わります。

古物商許可がまだの方は、特例の前提として許可の取得が先になります。許可の取り方は中古車販売に資格は必要?古物商許可の取り方で手順をまとめています。

古物商特例で帳簿に書く5項目と古物台帳の使い方

古物商特例で帳簿に書く事項は、国税庁のインボイスQ&A問110で示されています。具体的には、課税仕入れの相手方の氏名又は名称と住所又は所在地、課税仕入れを行った年月日、課税仕入れに係る資産の内容、支払対価の額、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる仕入れに該当する旨の5つです。問110の参考欄は、古物営業法で記載が義務づけられた古物台帳には最初の4つが載っていると説明しています。そこで、古物台帳と、5つ目の「該当する旨」を書いた総勘定元帳などを合わせて保存すれば、帳簿の保存要件を満たせます。保存期間は、古物営業法が定める3年より長く、課税期間の確定申告書の提出期限の翌日から7年間です。

帳簿の記載事項(問110)中古車での書き方の例古物台帳に載るか
相手方の氏名又は名称、住所又は所在地下取りしたお客様の氏名と住所載る(法第16条第4号)
課税仕入れを行った年月日買取りの契約日や引取日載る(取引の年月日)
資産の内容車名、登録番号、車台番号など載る(品目、特徴)
支払対価の額下取り価格、買取り価格台帳の運用で記録
特例の対象となる旨特例の対象と分かる記載を元帳の摘要に書く載らないので元帳などで補う

古物台帳に書く内容は古物営業法第16条で定められており、取引の年月日、古物の品目と数量、古物の特徴、相手方の住所、氏名、職業、年齢、相手方の確認のためにとった措置の区分です。警視庁が公開している帳簿の様式の備考には、自動車の特徴欄に自動車検査証の登録番号又は車両番号、車名、車台番号、所有者の氏名又は名称などを書くよう記されています。台帳の具体的な書き方は古物台帳の書き方で解説しています。

帳簿と台帳を別々に作らない工夫

下取り、買取りのたびに古物台帳と会計の元帳を手で二重に書くと、金額の転記ミスが起きやすくなります。車両ごとの仕入れ値と相手方を一度だけ入力し、台帳と仕訳の両方に使える管理方法にしておくと、7年保存の対象も一か所にまとまります。

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2割特例・3割特例と簡易課税のみなし仕入率

2割特例とは、免税事業者がインボイス登録をきっかけに課税事業者になった場合に、納付税額を売上税額の2割にできる経過措置です。国税庁のインボイスQ&A問114によると、対象は令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間で、事前の届出は要らず、申告書に付記するだけで使えます。個人事業者で12月決算なら、令和8年分が最後の対象年になります。令和8年度の税制改正で、その後を引き継ぐ3割特例ができました(問114-2)。こちらは個人事業者だけが対象で、令和9年分と令和10年分の申告で納付税額を売上税額の3割にできます。基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円以下であることなどが条件で、法人は使えません。

簡易課税制度は、売上げの消費税額にみなし仕入率を掛けた額を仕入税額とみなして計算する方法です。国税庁のタックスアンサーNo.6505によると、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の課税期間で使え、原則として適用を受けたい課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を出します。一度選ぶと原則2年間は続けなければなりません。中古車販売にかかわる事業区分は次のとおりです。

事業区分(No.6505、No.6509)みなし仕入率中古車屋での該当例
第1種事業(卸売業)90%仕入れた車の性質や形状を変えずに、他の事業者へ売る業販
第2種事業(小売業)80%仕入れた車の性質や形状を変えずに、一般のお客様へ売る小売
第4種事業(第1、2、3、5、6種以外)60%上の区分に当たらない売上げ
第5種事業(運輸通信業、金融業及び保険業、サービス業)50%サービス業に区分される売上げ

No.6509は、消費者から買った商品を性質や形状を変えずに他の事業者に売る場合も卸売業に当たると説明しています。整備や板金の工賃をどの区分に入れるかは、取引の内容で判断が分かれるため、この記事では断定しません。実際に申告する前に、税務署か税理士に確認してください。

一般課税と簡易課税の比べ方

古物商特例で仕入れの消費税をほぼ全額控除できる中古車販売では、粗利の厚さによって有利な方式が変わります。考え方を単純な例で示します。税込110万円で仕入れた車を税込132万円で一般のお客様に売り、ほかの課税仕入れがないとします。一般課税では売上税額12万円から仕入税額10万円を引いて2万円です。簡易課税の第2種事業では12万円の20%で2.4万円になり、2割特例でも2.4万円です。この例では売値に対する粗利が約17%なので、一般課税のほうが納付額が少なくなります。

実際には、家賃、広告費、オークション手数料などの課税仕入れも一般課税なら控除できます。一方、人件費は課税仕入れに当たりません。年間の見込みで両方を試算してから届出を出すのが確実です。粗利の目安は中古車販売の利益率で扱っています。

免税事業者からの仕入れの経過措置(80%から70%へ)

免税事業者などインボイスを出せない相手からの仕入れには、仕入税額相当額の一定割合を控除できる経過措置があります。国税庁のインボイスQ&A問113によると、割合は令和5年10月1日から令和8年9月30日までが80%、令和8年10月1日から令和10年9月30日までが70%、令和10年10月1日から令和12年9月30日までが50%、令和12年10月1日から令和13年9月30日までが30%です。令和8年度の改正で期限が2年延び、段階が4つになりました。さらに、令和8年10月1日以後に開始する課税期間からは、一の免税事業者等からの対象仕入れの合計額が年又は事業年度で1億円(税込み)を超えると、超えた部分には使えません。改正前の上限は10億円でした。

期間(Q&A問113)控除できる割合
令和5年10月1日から令和8年9月30日まで仕入税額相当額の80%
令和8年10月1日から令和10年9月30日まで仕入税額相当額の70%
令和10年10月1日から令和12年9月30日まで仕入税額相当額の50%
令和12年10月1日から令和13年9月30日まで仕入税額相当額の30%

中古車屋でこの経過措置が効いてくるのは、在庫の車ではなく経費の側です。個人で営む板金職人や陸送業者、洗車やコーティングの外注先が免税事業者だと、その支払いは古物商特例の対象になりません。経過措置を使うには、区分記載請求書等と同様の事項が書かれた請求書等を保存し、帳簿に「80%控除対象」や「免税事業者からの仕入れ」など、経過措置の適用を受ける仕入れである旨を書く必要があります(問113)。外注先との取引条件を見直すときは、70%に下がった分の差額も計算に入れてください。

開業時に決める消費税の手続きと順番

開業した年に何を決めておくかは、個人か法人か、業販の比率がどのくらいかで変わります。国税庁のNo.6501によると、基準期間の課税売上高が1,000万円以下なら原則として納税義務が免除されます。ただしインボイス登録をすると、売上高にかかわらず免除されません。新設法人でも、事業年度開始の日の資本金が1,000万円以上なら1期目から課税事業者です。開業1年目の中古車屋は免税事業者で始まる場合が多いものの、業販先から登録番号を求められたり、仕入れの多い年に還付を受けたいと考えたりすると、登録や課税選択を検討することになります。どちらを選んでも、古物台帳と帳簿の整備は最初の取引から必要です。

  1. 業販の割合を見積もります。整備工場や他の販売店への販売が多いなら、相手の仕入税額控除のためにインボイス登録が求められる場面が増えます。
  2. インボイス登録をするなら、2割特例(令和8年9月30日の属する課税期間まで)と3割特例(個人の令和9年分、令和10年分)のどちらが使えるかを確認します。
  3. 簡易課税を選ぶ場合は、届出の期限を確認します。2割特例や3割特例を使った翌課税期間は、申告期限までの届出で簡易課税に移れる措置があります(No.6505)。
  4. 古物台帳と会計帳簿の書式をそろえ、古物商特例の「該当する旨」を書く欄を最初から用意します。
  5. 免税事業者の外注先を一覧にして、経過措置の割合と1億円の上限にかからないかを確認します。

副業で小さく始める場合の届出の流れは個人事業主・副業で中古車販売を始める方法、仕入れ先ごとの特徴は中古車の仕入れルートで解説しています。

まとめ

中古車販売の消費税は、仕入れ先がインボイスを出せるかどうかで扱いが分かれます。個人のお客様や免税事業者から販売用に仕入れた中古車は、古物商許可があれば古物商特例により帳簿の保存だけで仕入税額控除ができます。帳簿には相手方の氏名と住所、年月日、内容、金額、特例に該当する旨の5つを書き、古物台帳と元帳を合わせて7年間保存します。納付額の計算は、一般課税、簡易課税(小売の第2種事業は80%、業販の第1種事業は90%)、2割特例、個人だけが使える3割特例から選びます。外注先が免税事業者の場合は、令和8年10月から控除割合が70%になった経過措置を使います。開業前に業販の比率と粗利を試算し、登録と届出の時期を決めておくと、申告の段階で迷わずに済みます。

中古車販売の消費税とインボイスに関するよくある質問

個人から買い取った中古車でも、消費税の仕入税額控除はできますか?
できます。国税庁のインボイスQ&A問106は、古物営業法の許可を受けた古物商が、適格請求書発行事業者以外の者から販売用の古物を買い受けた場合、一定の事項を書いた帳簿の保存だけで仕入税額控除を認めています。問106は中古車販売業の質問として書かれており、消費者からの中古車の仕入れがそのまま該当します。
古物商特例を使うとき、帳簿には何を書けばよいですか?
問110によると、相手方の氏名と住所、仕入れの年月日、仕入れた資産の内容、支払対価の額、帳簿のみの保存で控除できる仕入れに該当する旨の5つです。古物台帳に最初の4つが載るので、古物台帳と、該当する旨を書いた総勘定元帳などを合わせて保存すれば要件を満たせます。
インボイス登録をした業者から仕入れた車にも古物商特例は使えますか?
使えません。問106は、相手方が適格請求書発行事業者である場合は適格請求書の交付を受けて保存する必要があるとしています。オークション経由や業者間取引で売り手が登録事業者なら、通常どおりインボイスを受け取って保存します。
中古車販売で簡易課税を選ぶと、みなし仕入率は何%ですか?
国税庁の事業区分では、仕入れた商品の性質や形状を変えずに消費者へ売る小売業は第二種事業で80%、他の事業者へ売る卸売業は第一種事業で90%です。店頭で一般の方に売る分と業者へ売る分が混在する場合は、区分ごとに分けて計算します。
免税事業者からの仕入れの経過措置は今いくらですか?
国税庁のQ&A問113では、令和8年10月1日から令和10年9月30日までは仕入税額相当額の70%です。その後、令和12年9月30日までが50%、令和13年9月30日までが30%となります。令和8年10月1日以後に開始する課税期間からは、一の免税事業者等からの対象仕入れが年1億円(税込み)を超える部分には使えません。
中古車販売を始めるとき、車両や顧客の管理はどうすればよいですか?
販売する車の仕入れ値・整備費・売値、顧客の情報、注文書や保証書を1か所で扱えるのが車両販売システム(車販ソフト)です。整備も行う場合は自動車整備システム(自動車整備ソフト)とデータがつながるかを確認します。整備システム 比較や整備ソフト おすすめの情報を見るときは、整備ソフト 安いかどうかだけでなく、整備システム リースなしで始められるか、開業時の台数に合うかも確かめてください。

出典

この記事は次の一次情報をもとに作成しています(2026年10月4日確認)。

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