回送運行許可(ディーラーナンバー)とは?仮ナンバーとの違い・許可基準・手数料と使い方

回送運行許可とは、自動車の製作、陸送、販売、特定整備を業とする事業者が、地方運輸局長の許可を受けて、登録や車検のない車を業務として回送できる制度です。貸与される番号標は「ディーラーナンバー」とも呼ばれます。この記事は中古車屋の開業ガイドの一つとして、道路運送車両法第36条の2の条文と、北陸信越運輸局と北海道運輸局が公表している取扱要領をもとに、仮ナンバーとの違い、販売業者の許可基準、手数料、使い方の決まりを整理しました。許可基準は運輸局ごとに定められているため、申請前に主たる営業所を管轄する運輸支局で確認してください。
この記事で確認した一次情報
- 道路運送車両法(e-Gov法令検索)第36条の2(回送運行の許可)、第107条・第108条(罰則)
- 道路運送車両法関係手数料令(e-Gov法令検索)回送運行許可証の交付手数料
- 自動車の回送運行許可(北陸信越運輸局 長野運輸支局)回送運行許可等事務取扱要領、様式、実績報告
- 回送運行許可基準(北海道運輸局)新規許可と継続許可の台数基準
回送運行許可(ディーラーナンバー)とは
回送運行許可とは、道路運送車両法第36条の2に定められた、自動車の回送を業とする者のための許可です。許可を受けた事業者は、業務として回送する自動車(回送自動車)に回送運行許可番号標を表示し、回送運行許可証を備え付ければ、許可の有効期間内に、許可証に書かれた目的に従って登録や車検のない車を走らせられます。近畿運輸局の説明資料は、市区町村などが行う臨時運行許可(仮ナンバー)が1台の車の1回の運行に限られるのに対し、回送運行許可は1回の許可で複数の自動車に使えるさらに特例的な扱いだと説明しています。業界では、ディーラーが多く使ってきたことから「ディーラーナンバー」と呼ばれますが、正式な名前は回送運行許可番号標です。許可の有効期間は法律で5年を超えてはならないとされ、北陸信越運輸局と北海道運輸局の要領はいずれも5年としています。
回送運行許可と仮ナンバーの違い
回送運行許可と仮ナンバーの違いは、許可を出す機関、使える車の台数、有効期間、許可を受けられる人の4点です。仮ナンバー(臨時運行許可)は市区町村や運輸支局が出し、1台の車の1回の運行に限られ、有効期間は道路運送車両法第35条で5日以内です。手数料は運輸支局なら1両750円で、誰でも申請できます。回送運行許可は地方運輸局長が出し、許可を受けられるのは自動車の製作、陸送、販売、特定整備を業とする者に限られます。番号標は許可の有効期間中、回送の目的の範囲で別の車に付け替えて使えます。その代わり、許可には台数の実績などの基準があり、管理責任者の選任、管理簿の記録、毎年の実績報告といった管理の義務が付きます。
| 項目 | 仮ナンバー(臨時運行許可) | 回送運行許可(ディーラーナンバー) |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 道路運送車両法第34条・第35条 | 道路運送車両法第36条の2 |
| 許可する機関 | 市区町村長、地方運輸局長(運輸支局) | 地方運輸局長(申請は運輸支局) |
| 受けられる人 | 限定なし | 製作、陸送、販売、特定整備を業とする者 |
| 使える車 | 許可を受けた1台の1回の運行 | 回送の目的の範囲で複数の車 |
| 有効期間 | 5日以内(例外あり) | 5年以内(要領では5年) |
| 手数料 | 運輸支局は1両750円、市区町村は条例 | 許可証1枚につき許可の期間1か月までごとに2,050円 |
仮ナンバーの申請方法と返納期限は仮ナンバー(臨時運行許可)の取り方で詳しく解説しています。
回送運行許可を受けられる事業者と許可基準
回送運行許可を受けられるのは、自動車の製作、陸送、販売、特定整備を業とする者がその業務を行う場合に限られます。そのうえで、各地方運輸局が要領で台数などの基準を定めています。北陸信越運輸局の「自動車の回送運行許可等事務取扱要領」(令和4年3月31日改正)は、販売業の基準を1か月平均の販売車両数10両以上とし、輸入車は1両を2両として数えるとしています。北海道運輸局の基準も、販売を業とする者の新規許可は申請日の直前3か月の月平均販売台数が10両以上、継続許可は直前3か月の回送運行許可番号標の使用実績が月平均5両以上としています。開業したばかりで月の販売台数が10台に届かない店は、まず仮ナンバーで回し、販売実績が積み上がってから申請を考えるのが現実的です。特定整備を業とする者には、直前1年間の臨時運行許可による運行実績7台以上という別の基準があります。
| 業種 | 北陸信越運輸局の基準(別表第1) | 北海道運輸局の新規許可基準 |
|---|---|---|
| 販売業 | 1か月平均の販売車両数10両以上(輸入車は1両を2両) | 直前3か月の月平均販売台数10両以上 |
| 製作業 | 1か月平均の製作車両数5両以上 | 直前3か月の月平均製作台数10両以上 |
| 陸送業 | 直接陸送に従事する運転者数10名以上など | 月平均陸送台数30両以上かつ常用運転者7人以上 |
| 特定整備業 | 直前1年間の臨時運行許可による運行実績7台以上 | 直前1年間の臨時運行許可による運行実績7台以上 |
台数の基準は運輸局ごとに違います。上の表は北陸信越運輸局と北海道運輸局が公表している要領と基準の例です。他の地域で申請する場合は、管轄の運輸支局の登録部門に問い合わせてください。特定整備の認証については整備士向けの特定整備認証の取り方を参照してください。
回送運行許可の申請先と必要書類
回送運行許可の申請先は、主たる営業所の所在地を管轄する運輸支局か自動車検査登録事務所です。手続きは2段階に分かれ、まず「回送運行許可申請書」を出して許可を受け、次に「許可証の交付・許可番号標の貸与申請書」で許可証と番号標を受け取ります。北陸信越運輸局の要領では、販売業者は申請書に、販売を業とすることを示す書面と、最近3か月間の販売の実績を書いた書面(第5号様式)などを添えます。関係団体の会員であることの書面などで実績が証明される場合は、実績の書面を省略できるとしています。許可証の交付を申請するときは、自賠責保険証明書を提示し、その保険期間は許可の有効期間に相当する期間を満たしていなければなりません。社内取扱内規を作り、番号標の管理責任者を決めておくことも求められます。
- 主たる営業所を管轄する運輸支局で、回送運行許可申請書と実績を示す書面などを出します。
- 許可を受けたら、許可証の交付・番号標の貸与申請書を出し、自賠責保険証明書を提示します。
- 手数料を納め、回送運行許可証の交付と番号標の貸与を受けます。
- 管理責任者を選び、管理簿や番号標台帳をつけ始めます。
回送運行許可の手数料と交付される枚数
回送運行許可の手数料は、道路運送車両法関係手数料令で、回送運行許可証の交付を申請する者は「一枚につき許可の期間一月までごとに二千五十円」と定められています。その額が5,000円以上で100円未満の端数が出る場合は、端数を切り捨てます。計算すると、許可証1枚あたり12か月分で24,600円、60か月分で123,000円です。新潟運輸支局が公表している手数料の表でも、60か月の1組は123,000円となっています。交付される枚数にも基準があり、北陸信越運輸局の要領では、販売業は1か月平均の販売車両数10両以上で2枚(組)、それ以上10両増えるごとに2枚(組)以内を加えるとしています。必要以上の枚数は交付されないため、回送の実際の量に合わせて申請します。
| 許可の期間(許可証1枚) | 手数料(手数料令による計算) |
|---|---|
| 1か月 | 2,050円 |
| 12か月 | 24,600円 |
| 30か月 | 61,500円 |
| 60か月 | 123,000円 |
回送運行許可で走らせられる目的と範囲
回送運行許可で走らせられるのは、許可証に書かれた回送の目的の範囲だけです。近畿運輸局の説明資料は、販売を業とする者の回送自動車を、自己の販売しようとする自動車の展示、整備、改造、販売した自動車の納車、仕入れた自動車の引き取り、販売や仕入れに伴って必要となる車検、登録、封印のために回送する自動車と定義しています。回送の区間は、自己の営業所と、仕入先、納品先、自動車置場、車体架装工場、改造作業工場、整備工場、展示場、顧客所在地、運輸支局の間です。仮ナンバーでは認められない納車のための回送も、販売業者の回送運行許可なら目的に含まれます。一方で、社員の通勤や私用、代車としての貸し出し、営業活動のための移動は回送の目的に当たりません。目的に従わない運行をすると、返納命令や許可の取消しの対象になります。
回送運行許可番号標の使い方と管理の決まり
回送運行許可番号標の使い方には、条文と要領で細かな決まりがあります。道路運送車両法第36条の2第1項は、番号標を国土交通省令で定める位置に、被覆しないなど番号の識別に支障がない方法で表示し、回送運行許可証を備え付けることを運行の条件にしています。北陸信越運輸局の要領では、番号標は車の前面と後面に表示し、許可証は前面の見やすい位置に表示し、自賠責保険証明書を備え付けます。回送する車が保安基準に適合しているかは、運転者か選任した確認者が確認します。管理責任者は、許可証と番号標を使わせるたびに、使う人が自己の営業所の者であること、目的が許可証に書かれたものであること、期間が適正であることを確かめ、許可証等管理簿に記録します。運転者などへの法令研修も年1回以上行い、記録を残します。
- 番号標は前面と後面に表示し、許可証は前面の見やすい位置に掲げます。
- 自賠責保険証明書を車に備え付けます。
- 運行を終えたら、すみやかに許可証と番号標を管理責任者に返します。
- 管理簿は、許可の有効期間の満了後6か月間保管します(北海道運輸局の許可条件)。
- 毎年5月31日までに前年度の回送業務の状況を報告します。
- 名称、住所、営業所、管理責任者などが変わったら、遅滞なく届け出ます。
回送運行許可の返納と取消し、罰則
回送運行許可の返納と取消しは、道路運送車両法第36条の2第7項から第10項に定められています。許可の有効期間が満了したときや許可を取り消されたときは、交付を受けている許可証と番号標の全部を、その日から5日以内に地方運輸局長に返します。番号標を回送自動車以外の車に使った場合、許可証に書かれた目的に従わずに運行した場合、許可の条件に違反した場合は、返納命令か許可の取消しの対象です。返納命令を受けた者には6月以内の期間、許可証の交付と番号標の貸与が止められることがあり、許可を取り消された者は、取消しの日から2年を経過するまで新たな許可を受けられません。返納しなかった場合は第108条により6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金、偽りなど不正な手段で許可を受けた場合は第107条により1年以下の拘禁刑若しくは50万円以下の罰金、又はその両方が科されます。
| 事由 | 結果 | 根拠 |
|---|---|---|
| 回送自動車以外に使った、目的外の運行、条件違反 | 返納命令か許可の取消し | 第36条の2第8項 |
| 返納命令を受けた | 6月以内の交付と貸与の停止 | 第36条の2第9項 |
| 許可を取り消された | 取消しの日から2年間は新たな許可を受けられない | 第36条の2第10項 |
| 期限内に返納しない | 6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金 | 第108条 |
| 不正な手段で許可を受けた | 1年以下の拘禁刑若しくは50万円以下の罰金、又は併科 | 第107条 |
開業したばかりの販売店の考え方
開業したばかりの中古車販売店は、まず仮ナンバーと積載車、陸送の委託を組み合わせて回すことになります。北陸信越運輸局や北海道運輸局の基準では、販売業者の新規許可に月平均10両以上の販売実績が求められるため、開業の初月から回送運行許可を受けるのは難しいのが実情です。販売の実績を示す書面が必要になるので、売上と車両の記録を月ごとに出せるようにしておくと、申請の準備がしやすくなります。仕入れの方法は中古車の仕入れルート、オークション会場からの引き取りはオートオークション代行の仕組み、登録の手続きは中古車の名義変更と移転登録で解説しています。
まとめ
回送運行許可は、道路運送車両法第36条の2に基づき、自動車の製作、陸送、販売、特定整備を業とする者が地方運輸局長から受ける許可で、番号標はディーラーナンバーと呼ばれます。仮ナンバーと違い、有効期間(最長5年)の中で複数の車に使えますが、販売業者には北陸信越運輸局や北海道運輸局の例で月平均10両以上の販売実績が求められます。手数料は許可証1枚につき1か月ごと2,050円です。使えるのは許可証に書かれた回送の目的の範囲だけで、管理責任者の選任、管理簿の記録、毎年5月31日までの実績報告が必要です。目的外の使用は取消しの対象になり、取り消されると2年間は再び許可を受けられません。
回送運行許可に関するよくある質問
- ディーラーナンバーと回送運行許可は同じものですか?
- 同じものを指します。正式には道路運送車両法第36条の2の回送運行許可で、貸与される番号標を回送運行許可番号標といいます。ディーラーが多く使うことから、業界ではディーラーナンバーと呼ばれています。
- 開業したばかりの中古車販売店でも回送運行許可を受けられますか?
- 販売を業とする者であることに加え、台数の基準を満たす必要があります。北陸信越運輸局の要領は1か月平均の販売車両数10両以上、北海道運輸局は申請日の直前3か月の月平均販売台数10両以上を新規許可の基準としています。基準は運輸局ごとに違うため、管轄の運輸支局で確認してください。
- 回送運行許可で納車はできますか?
- 近畿運輸局の説明資料では、販売を業とする者の回送の目的に、販売した自動車の納車と、自己の営業所と顧客所在地の間の回送が含まれています。許可証に書かれた回送の目的の範囲であれば納車に使えます。通勤や私用、代車としての使用は目的に当たりません。
- 回送運行許可の手数料はいくらですか?
- 道路運送車両法関係手数料令で、回送運行許可証1枚につき許可の期間1か月までごとに2,050円です。12か月なら24,600円、60か月なら123,000円になります。
- 毎年の報告は必要ですか?
- 必要です。北陸信越運輸局と北海道運輸局はいずれも、回送運行に関する業務について前年度の状況を毎年5月31日までに報告するよう求めています。管理簿は許可の有効期間の満了後6か月間保管します。
- 販売台数の実績はどう管理すればよいですか?
- 月ごとの販売台数や仕入れ、登録の記録を出せる車両販売システム(車販ソフト)を使うと、申請時の実績の書面を作りやすくなります。整備部門がある場合は自動車整備ソフトと車両データをつなげておくと、回送の目的(整備、車検)の確認にも役立ちます。
出典
この記事は次の一次情報をもとに作成しています(2026年10月24日確認)。
- e-Gov法令検索 道路運送車両法(第35条、第36条の2、第107条、第108条):https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0000000185
- e-Gov法令検索 道路運送車両法関係手数料令:https://laws.e-gov.go.jp/law/326CO0000000255
- 北陸信越運輸局 長野運輸支局 自動車の回送運行許可:https://wwwtb.mlit.go.jp/hokushin/nagano/touroku/kaisou/kaisou.html
- 北陸信越運輸局 自動車の回送運行許可等事務取扱要領(PDF):https://wwwtb.mlit.go.jp/hokushin/nagano/touroku/kaisou/youshiki/01toriatukaiyouryou.pdf
- 北海道運輸局 回送運行許可基準(PDF):https://wwwtb.mlit.go.jp/hokkaido/content/000183101.pdf
- 近畿運輸局 自動車の回送運行許可(PDF):https://wwwtb.mlit.go.jp/kinki/content/000296293.pdf
- 北陸信越運輸局 新潟運輸支局 手数料一覧(PDF):https://wwwtb.mlit.go.jp/hokushin/niigata/touroku/document/tesuuryou.pdf
