中古車にクーリングオフはある?店舗・訪問販売・ネット販売の扱いと販売店のトラブル防止

中古車を店舗で買った場合、クーリングオフはできません。クーリングオフは特定商取引法が訪問販売や電話勧誘販売などに限って認めている制度で、さらに自動車(二輪を除く)は、訪問販売や電話勧誘販売で売った場合でもクーリングオフの規定が適用されないと同法の政令で定められています。この記事は中古車屋の開業ガイドの一つとして、特定商取引法と消費者契約法の条文、消費者庁と国民生活センターの資料をもとに、店舗、訪問販売、ネット販売それぞれの扱いと、販売店がトラブルを防ぐための説明を整理しました。
この記事で確認した一次情報
- 特定商取引に関する法律(e-Gov法令検索)第9条(クーリングオフ)、第15条の3(通信販売の返品)、第26条(適用除外)
- 特定商取引に関する法律施行令(e-Gov法令検索)第14条(自動車の適用除外)
- 通信販売(消費者庁 特定商取引法ガイド)返品特約と広告の表示事項
- 中古自動車(国民生活センター)相談件数と最近の相談事例
中古車のクーリングオフとは
中古車のクーリングオフとは、契約した後でも一定の期間内なら理由を問わず無条件に契約をやめられる制度を、中古車の購入に当てはめた場合の話です。クーリングオフは、すべての契約に使える制度ではありません。国民生活センターのクーリングオフの案内は、できる取引として、訪問販売(キャッチセールスやアポイントメントセールスを含む)、電話勧誘販売、特定継続的役務提供、訪問購入を8日間、連鎖販売取引と業務提供誘引販売取引を20日間と示しています。お客様が自分から店に来て、店舗で契約した中古車の購入は、このどれにも当たりません。そのため、店舗での中古車の購入にクーリングオフは適用されません。国民生活センターの集計では、中古自動車に関する相談は2025年度に8,642件寄せられており、解約やキャンセル料をめぐる相談も含まれています。お客様の中には「8日以内ならやめられる」と思っている人もいるため、販売店から先に説明しておくことが大切です。
| 取引の形 | 中古車(四輪)のクーリングオフ | 根拠 |
|---|---|---|
| 店舗での購入 | 適用されません | 特定商取引法のクーリングオフの対象取引に当たりません |
| 訪問販売、電話勧誘販売 | 適用されません | 特定商取引法第26条第4項第1号、同法施行令第14条 |
| 通信販売(ネット販売) | クーリングオフの制度はありません | 返品は広告の特約によります(第15条の3) |
| 事業者が営業のために買う場合 | 特定商取引法の規定は適用されません | 特定商取引法第26条第1項第1号 |
店舗で買った中古車にクーリングオフが適用されない理由
店舗で買った中古車にクーリングオフが適用されないのは、特定商取引法第9条のクーリングオフが、訪問販売に限った規定だからです。同条は、販売業者が営業所等以外の場所で契約の申込みを受けた場合などに、申込者が書面を受け取った日から8日以内なら申込みの撤回や契約の解除をできると定めています。同法第2条第1項は、訪問販売を、営業所等以外の場所で契約する販売と、営業所等以外の場所で呼び止めて営業所に同行させた人などと営業所で契約する販売と定義しています。お客様が自分の意思で展示場に来て、店舗で商談して契約した場合は、訪問販売に当たりません。ただし、路上で呼び止めて店に連れてきたり、目的を告げずに電話で呼び出したりして店舗で契約させた場合は訪問販売に当たる可能性があり、その場合も次の節で説明するとおり自動車はクーリングオフの適用除外です。いずれにしても、契約は原則として契約書の内容に従います。
訪問販売で中古車を売る場合のクーリングオフ
訪問販売で中古車を売る場合でも、四輪の自動車にはクーリングオフの規定が適用されません。特定商取引法第26条第4項第1号は、販売条件の交渉が販売業者と購入者の間で相当の期間にわたり行われるのが通常の取引の態様である商品として政令で定めるものについて、第9条(訪問販売のクーリングオフ)と第24条(電話勧誘販売のクーリングオフ)を適用しないとしています。同法施行令第14条は、その商品を「自動車(二輪のものを除く。)」と定めています。つまり、お客様の自宅や職場に出向いて四輪の中古車を売っても、クーリングオフの対象にはなりません。一方で、適用されないのはクーリングオフの規定だけです。訪問販売の書面の交付や、不実のことを告げる行為の禁止(第6条)、それによる誤認で結んだ契約の取消し(第9条の3)などの規定は残ります。二輪車は適用除外に含まれないため、バイクを訪問販売で売る場合はクーリングオフの対象になります。
- 四輪の自動車は、訪問販売と電話勧誘販売でもクーリングオフの規定が適用されません(施行令第14条)。
- 二輪の自動車は適用除外に含まれず、訪問販売ならクーリングオフの対象です。
- 訪問販売の書面の交付、不実告知の禁止、誤認による取消しの規定は残ります。
- 取消権は、追認できる時から1年、契約から5年で時効により消えます(第9条の3第4項)。
お客様の自宅に出向いて車を買い取る出張買取は、特定商取引法の訪問購入の規定がありますが、同法施行令第34条で自動車は対象から外されています。古物営業法での出張買取の扱いは古物商の行商と出張買取で解説しています。
ネット販売の中古車と返品特約の表示
ネット販売の中古車にはクーリングオフの制度はなく、返品できるかどうかは広告に表示した返品特約で決まります。特定商取引法第15条の3は、通信販売で商品を買った人は、商品の引渡しを受けた日から8日を経過するまでは申込みの撤回や契約の解除ができると定め、ただし販売業者が広告に返品についての特約を表示していた場合はその特約に従うとしています。インターネットでの契約のような電子消費者契約では、広告に加えて、申込みの最終確認画面にも特約を表示する必要があります。消費者庁の特定商取引法ガイドは、返品に関する事項(返品の可否、返品の期間などの条件、返品の送料負担の有無)を広告で省略できない事項としています。特約を表示していなければ、8日以内の返品を受けることになり、引取りや返還の費用は購入者の負担です。自店のサイトや掲載サイトで中古車を売るなら、「現車確認のうえでのご契約後の返品はお受けできません」など、返品の可否と条件を明記します。
| 確認すること | 内容(特定商取引法第15条の3、消費者庁ガイド) |
|---|---|
| 返品特約の表示 | 広告に表示します。ネット契約では最終確認画面にも表示します |
| 特約がない場合 | 引渡しから8日以内は申込みの撤回、解除ができます。費用は購入者負担です |
| 表示する内容 | 返品の可否、期間などの条件、送料負担の有無 |
| そのほかの広告の表示事項 | 販売価格、支払時期と方法、引渡時期、事業者の名称、住所、電話番号など |
中古車の契約のキャンセルとキャンセル料
中古車の契約のキャンセルは、クーリングオフがない以上、契約書の定めと民法、消費者契約法で扱いが決まります。国民生活センターの中古自動車のページには、納車が遅れそうで解約したところ、契約書に書かれたキャンセル料が高額で支払いたくないという相談が載っています。消費者契約法第9条第1号は、消費者契約の解除に伴う損害賠償の予定や違約金を定める条項のうち、同じ種類の契約の解除で事業者に生じる平均的な損害の額を超える部分を無効としています。同条第2項は、お客様から説明を求められたときに、違約金などの算定の根拠の概要を説明するよう事業者に努力義務を課しています。キャンセル料を決めるときは、その時点までに実際にかかる費用、たとえば名義変更や車庫証明の費用、注文に応じて行った整備や取り寄せの費用などを根拠にし、契約の段階に応じて区分しておくと説明しやすくなります。
- 注文書の裏面などに、契約の成立時期とキャンセルの条件を書きます。
- キャンセル料は、契約の段階ごとに、実際にかかる費用を根拠に決めます。
- 納車の遅れや車の状態の違いなど、店側の事情による解約の扱いも決めておきます。
注文書と売買契約書の作り方は中古車の注文書と売買契約書で解説しています。
販売店がトラブルを防ぐための説明
販売店がトラブルを防ぐためにできる一番のことは、契約の前に、クーリングオフがないことと、キャンセルの条件を口頭と書面の両方で伝えることです。国民生活センターに寄せられた中古自動車の相談事例には、禁煙車と表示された車に納車後にたばこのにおいが残っていた、現車を見ずに買った車のエアコンが故障していた、オークション会場で販売店から買った車に雨漏りがあった、といった表示や状態をめぐるものがあります。こうした相談の多くは、契約前の説明と書面の記録で防げます。修復歴、走行距離、整備の有無、保証の内容は、自動車公正取引協議会の規約で表示が求められる項目でもあり、注文書にも同じ内容を書いておきます。ネット販売や遠方のお客様には、現車の写真や動画、状態の説明を事前に送り、確認してもらってから契約します。
- 商談の初めに「店舗でのご契約にクーリングオフはありません」と伝えます。
- 修復歴、走行距離、整備、保証の内容を書面で示し、署名をもらいます。
- キャンセルの条件とキャンセル料を、契約の前に説明します。
- ネット販売では返品特約を広告と最終確認画面に表示します。
- 説明した内容と日時を、商談の記録に残します。
表示のルールは自動車公正取引協議会の表示ルール、保証の付け方は中古車の保証の付け方で解説しています。
まとめ
中古車を店舗で買った場合、クーリングオフは適用されません。クーリングオフは訪問販売や電話勧誘販売などに限られた制度で、さらに四輪の自動車は、特定商取引法第26条第4項第1号と同法施行令第14条により、訪問販売や電話勧誘販売でもクーリングオフの規定が適用されません。二輪車は適用除外に含まれません。ネット販売にはクーリングオフの制度がなく、広告と最終確認画面に返品特約を表示していなければ、引渡しから8日以内の返品を受けることになります。キャンセル料は、消費者契約法第9条により平均的な損害を超える部分が無効になるため、実際にかかる費用を根拠に決め、契約前に説明します。
中古車のクーリングオフに関するよくある質問
- 店舗で買った中古車はクーリングオフできますか?
- できません。クーリングオフは特定商取引法が訪問販売や電話勧誘販売などに限って認める制度で、お客様が自分から店に来て店舗で契約した購入は対象外です。契約は原則として契約書の内容に従います。
- 自宅に来た販売員から中古車を買った場合はクーリングオフできますか?
- 四輪の自動車はできません。特定商取引法施行令第14条が、自動車(二輪のものを除く)を訪問販売と電話勧誘販売のクーリングオフの適用除外としています。ただし、不実のことを告げられて誤認して結んだ契約は、同法第9条の3で取り消せる場合があります。
- ネットで買った中古車は返品できますか?
- 通信販売にクーリングオフの制度はありません。販売店が広告に返品特約を表示していればその特約に従います。表示がなければ、特定商取引法第15条の3により、引渡しから8日以内は契約を解除でき、返品の費用は購入者の負担です。
- 中古車の契約をキャンセルするとキャンセル料はかかりますか?
- 契約書の定めによります。ただし、消費者契約法第9条第1号により、同じ種類の契約の解除で事業者に生じる平均的な損害の額を超える部分は無効です。困ったときは消費者ホットライン188に相談できます。
- バイクの訪問販売はクーリングオフの対象ですか?
- 施行令第14条の適用除外は「二輪のものを除く」自動車なので、二輪車を訪問販売で売った場合は、特定商取引法第9条のクーリングオフの対象になります。書面を受け取った日から8日以内なら解除できます。
- 説明した内容を記録に残すにはどうすればよいですか?
- 注文書、車両の状態の説明、キャンセル条件の説明日を1台ごとに残せる車両販売システム(車販ソフト)を使うと、後で確認を求められたときにすぐ出せます。整備も行う店は自動車整備ソフトの整備記録とつなげておくと、納車前の整備内容も示せます。
出典
この記事は次の一次情報をもとに作成しています(2026年10月24日確認)。
- e-Gov法令検索 特定商取引に関する法律(第2条、第6条、第9条、第9条の3、第15条の3、第26条):https://laws.e-gov.go.jp/law/351AC0000000057
- e-Gov法令検索 特定商取引に関する法律施行令(第14条、第34条):https://laws.e-gov.go.jp/law/351CO0000000295
- e-Gov法令検索 消費者契約法(第9条):https://laws.e-gov.go.jp/law/412AC0000000061
- 消費者庁 特定商取引法ガイド 通信販売:https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/mailorder/
- 国民生活センター クーリング・オフ:https://www.kokusen.go.jp/soudan_now/data/coolingoff.html
- 国民生活センター 中古自動車(各種相談の件数や傾向):https://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/ucar.html
